不穏な視線

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 今日のバイトも無事――そこそこ八城がやらかしたこともあったが、初めてのバイトだしそこは大目に見ることにしよう。  何より店長が全て許したので、俺が口を挟むことでもない。  でもやはり物覚えは良くて、昨日教えたことは全て覚えていた。  少しハンディにも触れることが出来たので、次にはひとりでそこそこ動けるようになるだろう。  今日も上がりが同じだったので、賄いを事務所で食べる。  八城は昨日とは違う魚のメニューをチョイスしていて、本当に魚が好きなんだなと思った。  ……猫だからか?  そんなことをぼんやり考えながら、幸せそうに頬張る八城を見ていた。  ――――お疲れ様でしたと、八城と一緒に店を出る。  帰り道、帰る場所が一緒だと言うのはまだ変な感じだ。 「バイトもだけどさ。学校にも慣れたか?」  まだ家から遠いと言うこともあって、八城は人間の姿をしている。そんな彼女に話し掛けた。 「クラスの男の子達は良くしてくれるから、とても楽しいにゃ。勉強は嫌いだけど」  にゃはは~と笑う八城。男共が仲良くしているのは、裏がありそうだけどな。 「バイトは初めてだったけど楽しいし、何より美味しいご飯が食べれて幸せなのにゃ~」  にゃ~と目を輝かせる八城は、やっぱりバイトの意味が分かってなさそうだが、本人が楽しそうだからまぁいいか。
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