不穏な視線

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「うわあああ!」  思わず大きな声で叫んでしまう。  にこりと笑った直後の八城がした行動は――ジャンプだった。  彼女の手を握ったままの俺も当然ジャンプする形となり、体は宙に上がる。  何階もある高いビルの横を登るように上がっていれば、見事屋上の床に着地した。  八城は綺麗に着地するが、力が抜けてしまった俺はがくりと崩れる。  ジェットコースターの上りよりも怖かったのは、俺だけ……?  って言うか、すげー跳躍力……。  あれか? 猫だからか?  プチパニックになっていると、やっぱり悪魔化しているにゃと声がする。  ようやく顔を上げれば、目の前にいる怪物の姿にうっ……! と顔を顰めてしまった。 「なんだ、あれ……」  見た目はただの巨大な蜘蛛だ。  黒い体毛に覆われ、闇夜に照らされてふたつの目が青白く光っている。  ここまではいい……。問題は "足" だ。  8本ある足をよく見れば、それは人間の腕のような物。  ホラー映画なんかに出てきそうなグロさに、顔は引きつったままだった。  初めて見た怪物は、植物が巻き付いた人間みたいなもの。  昨日は鼠ときて、今日は蜘蛛……。  ロゼと言う存在は、思っている以上に気持ちの悪いものらしい。
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