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人間の腕で近寄ってくる化物の姿に、表情は歪む。
しかし八城は気にする素振りは全くなく、蜘蛛と対峙するように立っている。
「新、ボクは剣になるから戦ってにゃ!」
「え、ちょっと……」
まだ心構えも準備も出来ていない俺に、猫になった八城が跳んできた。
そうなれば受け止めるしかなく、手の中で細剣となった。
おいおい……。昨日の鼠は小さかったから、まだ気持ち的にもそれなりの余裕があった。
だが今日の蜘蛛はデカイ。それに見た目の気持ち悪さも相まって、立ち向かえる気持ちはなかった。
蜘蛛はある程度距離を詰めると、動きを止め青白い双眸(そうぼう)で、じっとこちらを見ている。
キチキチと何か分からない音を立て、それを見つめる俺が握る細剣に力は篭っていなかった。
……戦えって。どうやって……?
訳の分からない緊張が張り詰め、ごくりと唾を呑み込んだ時だった。
8本の腕を使って、蜘蛛は高く跳び上がる。
『来るぞっ!』
八城の声に分かってる! そう思っても咄嗟に体は動かない。
蜘蛛は尻からではなく、口から白い物を吐き出した。
それが糸だと分かり、何とか斬り払おうと剣を振った。
最初は大きな塊だったが、ぶわっと広がる。
一瞬で巣のような円が広がり、一部が細剣に触れるが――。
「動かない……!?」
細剣は糸に絡まり付き、振り解こうにも離れない。
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