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蜘蛛の意識は八城にしか向いていないようで、俺が近付いても動きはなかった。
鉄の棒を突き出す。
ずぶりと脇腹に尖端が刺さった。
悲鳴は上がらない。だが苦痛に仰け反り、締め上げる手が開く。
その隙に八城は抜け出すと、俺の横に降り立った。
「助かった」
げほっと咳払いする八城はまだ苦しそうだ。
ちらりと蜘蛛に目を向ければ、鉄の棒が刺さった箇所からは青い血が流れていて、俺はうっと顔を顰めた。
「今の内に畳み掛けるぞ!」
そう大きな声を出すと、ぴょんと飛んでくる。
それを受け止めれば、八城は細検になっていた。
ぎゅっと握れば、やらなきゃいけないんだよなと腹を括(くく)る。
まだ苦しむ蜘蛛に細検を振ると、それを防御しようと3本の腕が伸びてきた。
しかしまるで大根のようにスパッと斬れ、腕が宙を舞う。
くっと歯を噛み締め、振り上げた細検を腹目掛け突き刺した。
細い刃が貫いたのは、ちょうど蜘蛛の心臓だったのだろう。
核が壊れた蜘蛛は動きを止めると、身体中にヒビが入った後、跡形もなく散った。
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