不穏な視線

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「倒した、のか……?」  呆然と正面を見つめていると、右の手からするりと細検が滑る。  猫の姿の八城が地に足を着けると、よくやったと声を出した。 「大丈夫か? 握り絞められていたけど……」 「骨が折れる前に新が助けてくれたから、問題はない」  猫の姿なので、ハッキリとした表情は読み取れない。  透き通る天色の瞳を向けられ、そうかとしか言えなかった。 「でも何でここにロゼが現れたんだ?」  素朴な疑問を口にすると、人間の姿になった八城は柵の方に歩き出した。 「浮遊する人間の魂は何処でも存在するにゃ。だからここにいたっておかしくない」  そう言って、彼女はある場所で足を止める。  目の前の鉄柵は崩れ、簡単に地面から宙に移動出来るようになっていた。  蜘蛛を刺す為に使った棒も、手に触れれば簡単に崩れた。  だから自然と壊れた箇所があることも、また自然な話だ。  だがどうして八城はそこに行ったのか?  気になった俺はそこに歩み寄り、彼女の足元にあった物を見て、あっと口を開いた。  ――生々しく残されていたのは、きちんと揃えられた2足の革靴。  それを見て、嫌でも何があったのか分かってしまった。
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