山吹色の瞳を持つフィアンセ

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「何かリリちゃん、凄い人気者だね」  そこにひょこっとやって来たのは森口。  対応している八城を見ながら、何処か感心したように言う。 「クラスでもあんな感じだから、こうなることは分かってたけどな」 「あ、そうなんだ。まぁリリちゃん可愛いしね」 「それより、八城自体は何とも思ってないだろうから、変なことに巻き込まれなきゃいいけど」 「何か咲間、リリちゃんのお父さんみたい」  ぷっと吹き出す森口を見て、そんなんじゃないよと苦笑いした。 「あ、森口ちょっと動かないで」 「え?」  どうしたの? と不思議そうにする彼女に手を伸ばす。  森口のトレードマークである、ひとつに纏めたお団子ヘアー。  その後れ毛を止めているヘアピンが、1本取れそうになっていた。  それをそっと掴む。  髪の毛に引っ掛かることもなく、するりと取れた。 「ヘアピン、落ちそうだったから。はい」  取ったピンを渡すと、何故か森口は緊張したように固まっている。 「……森口?」  訊ねると、我に返ったように慌てて手が伸びてきた。 「あ、ありがとう!」 「うん」  ピンを手の平に置く。それから八城の方に視線を戻せば、ひとりの男に手を握られていた。  ……さすがにあれはマズイよな。  ここはメイド喫茶ではなくファミレスだ。  八城も仕事中だし、何より他のお客の目もある。  俺ははぁと息を吐いた。 「八城を戻してくるから、洗い物に向かわせて」 「分かった」  森口の返事を聞くと、八城が対応するテーブルへと向かった。
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