0人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
05. 4Dプリンター
「4Dプリンターが完成した」
「博士、もう販売されています」
「うん? 何を言っているんだ、そんなはずはない」
「3Dプリンターは私も最近、買いました」
「3Dではない。4Dだ、四番目の次元、すなわち時間を印刷することが出来る。ところで、何のために、3Dプリンターを買ったのかね?」
「大切な人への、プレゼントを作るためです」
「そうか、ありがとう。やはり、君は私の事が」
「博士ではありません。博士ではありません」
「何故、二回言ったのだ。そうか、大事なこと、だからか」
「博士だけは、絶対に、ありえません」
「何故、強調したのだ。そうか、大事なこと、だからか」
「博士、実験を」
「うむ、では実験開始」
4Dプリンターが印刷を開始する。印刷は数分で終わった。
「博士、これは植木鉢ですか?」
「まぁ、見ていたまえ」
植木鉢から芽が生える。芽は双葉に、双葉は茎に、やがてそれは蕾となり、花を咲かせる。
「うん、実験は成功だな」
「博士、お願いがあります。私に4Dプリンターを使用させて下さい」
「構わないよ。但し、一つだけ条件がある」
「……条件?」
「迷惑そうだね」
「はい、迷惑です。博士と一緒に来たくはありませんでしたが、条件なので仕方がありません」
「ここかい?」
「はい、博士」
二人が着いたのは病院だった。
「お見舞いかい?」
「…………」
助手は無言で病院内を進み、博士はその後に続く。やがて、二人はある病室に入った。ベットで、少女が眠っている。その側には医者と看護婦の姿がある。医者が助手に話しかけた。
「よかった、間に合いましたね。多分、もうすぐです」
助手は無言で医者と看護婦に頭を下げ、少女の枕元にプレゼントを置いた。プレゼントは二体の人形。二体の人形は楽しそうに踊っている。人形の一体はベットの少女に似ていた。そして、もう一体は……。
医者が言葉を告げた。
「ご臨終です」
助手は医者と看護婦に頭を下げ、博士と共に病室を出た。二人は病院の廊下に佇む。
「博士、ありがとうございます。博士の発明は彼女の魂を救ってくれました」
「いや、それは違う」
「人には魂など、無いと仰りたいのでしょうか?」
「それも違う」
「…………」
「救われたのは、君の魂だよ」
「私は、博士の、そういうところが嫌いです」
最初のコメントを投稿しよう!