05. 4Dプリンター

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05. 4Dプリンター

「4Dプリンターが完成した」 「博士、もう販売されています」 「うん? 何を言っているんだ、そんなはずはない」 「3Dプリンターは私も最近、買いました」 「3Dではない。4Dだ、四番目の次元、すなわち時間を印刷することが出来る。ところで、何のために、3Dプリンターを買ったのかね?」 「大切な人への、プレゼントを作るためです」 「そうか、ありがとう。やはり、君は私の事が」 「博士ではありません。博士ではありません」 「何故、二回言ったのだ。そうか、大事なこと、だからか」 「博士だけは、絶対に、ありえません」 「何故、強調したのだ。そうか、大事なこと、だからか」 「博士、実験を」 「うむ、では実験開始」  4Dプリンターが印刷を開始する。印刷は数分で終わった。 「博士、これは植木鉢ですか?」 「まぁ、見ていたまえ」  植木鉢から芽が生える。芽は双葉に、双葉は茎に、やがてそれは蕾となり、花を咲かせる。 「うん、実験は成功だな」 「博士、お願いがあります。私に4Dプリンターを使用させて下さい」 「構わないよ。但し、一つだけ条件がある」 「……条件?」 「迷惑そうだね」 「はい、迷惑です。博士と一緒に来たくはありませんでしたが、条件なので仕方がありません」 「ここかい?」 「はい、博士」  二人が着いたのは病院だった。 「お見舞いかい?」 「…………」  助手は無言で病院内を進み、博士はその後に続く。やがて、二人はある病室に入った。ベットで、少女が眠っている。その側には医者と看護婦の姿がある。医者が助手に話しかけた。 「よかった、間に合いましたね。多分、もうすぐです」  助手は無言で医者と看護婦に頭を下げ、少女の枕元にプレゼントを置いた。プレゼントは二体の人形。二体の人形は楽しそうに踊っている。人形の一体はベットの少女に似ていた。そして、もう一体は……。  医者が言葉を告げた。 「ご臨終です」  助手は医者と看護婦に頭を下げ、博士と共に病室を出た。二人は病院の廊下に佇む。 「博士、ありがとうございます。博士の発明は彼女の魂を救ってくれました」 「いや、それは違う」 「人には魂など、無いと仰りたいのでしょうか?」 「それも違う」 「…………」 「救われたのは、君の魂だよ」 「私は、博士の、そういうところが嫌いです」
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