04. スマートラジオ

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ

04. スマートラジオ

「スマートラジオを発明した」 「…………」 「どうした? 何か、言いたまえ」 「博士、ネタ切れですか?」 「ネタ切れ? なんのことだ? 意味が判らん、それより、この試作品を見たまえ」 「普通のラジオに見えます」 「見かけは、そうだね。スマートラジオ、スイッチ、オン!」 「音声入力ですか。昨今では当たり前の機能ですね」 『入力だけではありません。ご指示をお願いします』 「……博士、ラジオが喋りました」 「スマートだからな」 「なるほど、AI搭載ですか。AIの性能は?」 「一般的な成年程度だな」 「このサイズで? それだけで大発明だと思いますが」 「そうかね? それより、実験だ。さぁ、ラジオに指示を与えたまえ」 「……そうですね、落語が聞きたいです」 『今、落語を放送している番組がありません』 「番組? ネットには無数にコンテンツが存在するはずです」 「ネット? 何を言っているのかね、これはラジオだよ」 「……もしかして、本当にラジオ放送だけを受信するのですか?」 「当たり前だ、ラジオだからな」 「判りました、FEN、今はAFNですね、米軍放送を聞かせて下さい」 『ここでは受信出来ません。日本のAFNは東京、青森、山口、長崎、沖縄のみで受信可能です』 「では、なにが受信できるのですか?」 『大阪の放送局はAM、FMともに受信出来ます。AMは京都、兵庫の放送局の一部も受信可能です』 「博士、ここは大阪ですか?」 「何を言っている? ここは大阪市天王寺区、最寄駅は寺田町。何故、君は自分の勤務先の所在地を把握していないのだ」 「それでは、何でもいいので、面白い番組を聞かせて下さい」 『今日、初めてお会いしたので貴方の好みが判りません。それで面白いものと言われても(笑)』  助手はラジオを床に叩きつけた。ラジオは沈黙する。 「博士、申し訳ありません」 「いや、構わない。一つ、判ったことがある、それだけでも発明した意味はあった」 「博士、判ったこととは?」 「ラジオにAIを搭載するのはスマートじゃない」 「博士、落ちていません」
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!