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「杏ちゃん、ここにいた」 ガラリと扉の開く音。それに混じって先輩の声が聞こえる。 「先輩……」 「は、なんで泣いてんの?」 狼狽えている先輩の姿を見て、涙腺が緩む。 こんなことくらいで泣くなんて。どうしてこんなにも弱くなってしまったの。 「違っ、この子が勝手に泣き出して……」 先輩達がしどろもどろになりながら弁解する。 「森ノ宮さんがこの子ばっかり構うから……!」 バンッ 言葉を遮るように先輩が壁を叩く。いつになく険しい顔をした先輩に、背筋がひやりとする。 「俺が一方的に惚れてるだけで、杏ちゃんは何も悪くない。だから杏ちゃんに謝れよ」 押し殺すような低い声に圧倒された先輩達が、「ごめんなさい」と頭を下げて休憩室を出て行く。
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