16/16
前へ
/16ページ
次へ
「俺のせいだよな」 二人取り残された休憩室で、先輩がぽつりと呟いた。先程の冷たい表情の先輩とは別人のよう。 しょんぼりと頭を項垂れて、私の顔を覗き込むように上目遣いで見上げる先輩。 「来てくれて嬉しかったです」 先輩を慰めようと口を開いた途端、先輩が手を伸ばし、腕の中にぎゅっと抱き締められた。 「杏ちゃん、俺と付き合ってよ」 薄いワイシャツ越しに、ドクン、ドクンと心臓の鼓動が聞こえる。 「……お願いします」 真ちゃんへの罪悪感。それをはるかに勝る先輩への恋心が、二人の中途半端な気持ちに答えを出した。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加