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「ねぇ、このワンピースどう?」
試着室のカーテンを開け、淡い紫色のワンピースをひるがえしながらくるりと一回転する。
「いいと思うよ」
「もう、真ちゃんってば。どの服着ても同じ反応ばっかり」
頬をぷくりと膨らませると、真ちゃんが慌てて言葉を繕った。
「ごめん、僕センスないからわからないや。でも、杏奈によく似合ってるよ」
今年の春で、真ちゃんこと岬真一と付き合って2年になる。
黒縁メガネに、チェックシャツをインしたジーンズ。冴えない容姿、コミュ障と典型的なオタクタイプだが、優しくて誠実な人だ。
元彼に二股をかけられ、こっぴどく振られて落ち込んでいた私に、たくさんの愛をくれた真ちゃん。真ちゃんにときめくことはないけれど、家族のような心地良さを感じられる。
浮気なんて考えられないし、なによりも私のことを大事にしてくれる。この人と結婚したら、きっと幸せになれるのだろうと思う。
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