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「お母さん!お父さん!何で無視するの!?私何かした!?」
家族団欒で食卓を囲む中、団欒には似付かわしくない叫び声を、美咲は上げた。
「…舞、ハンバーグ美味しい?」
美咲の声をまるで聞こえていないかのように、母の祐子は、妹の舞に笑顔を振り蒔いた。
「舞、醤油取ってくれ」
父親の誠司は、美咲の目の前に醤油差しがあるにも関わらず、美咲の隣に座る舞に頼んだ。
「おばあちゃん!二人になんとか言ってよ!」
「…年寄りには、ハンバーグは脂っこいね」
祖母の百合子は、美咲の呼び掛けに答える事無く、小姑よろしく料理にケチを付ける。
「舞!何でみんな無視するのかな!?私、何かしたのかな!?」
大粒の涙を浮かべ、美咲は舞に問い掛けた。
「…もう直ぐ、お姉ちゃんの命日だね」
舞は箸を置くと、ぽつりと呟いた。
「…えっ?」
「…そうだね、来週だね」
「美咲も生きていれば、今年で二十歳か…」
「私、お姉ちゃんの事、写真でしか知らないけど、いっぱいお喋りしたり、遊んだりしたかったな」
「…嘘、嘘だ!私はここに居るでしょう!」
成仏出来ない美咲の魂の叫び声は、今日も誰にも届く事はなかった。
おわり。
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