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年度末の慌ただしさでヘロヘロ。
新年度の否応なしにピリッとなる空気でクタクタ。
1週間を闘い終えたこんな金曜の夜は、彼のニオイに包まれたい。
今夜の、半分だけの淡い月に勇気を貰って、えいっとスマホをタップした私。
『いいよ。てか、いつまで聞くのよ、それ』
思いのほかすぐ既読になって送られてきた四角い画面の彼の言葉は素っ気ない。
でも、唇を尖らせ、ちょっとだけ寄り目で、丸い両手で文字を入力する姿が私には見えてくる。
彼の言う『それ』…とは、私が送った『今日お邪魔していい?』のこと。
まだ慣れないんだ。
彼の空間に私が入り込んでいいのか。
彼の時間を私が占領していいのか。
いつまで、なんだろうか。
いつまでも、なんだろうな。
忙しさを数値で表すことは出来ないけれど、九時五時で働く私なんかよりも不規則な時間での勤務の彼の方がきっと忙しくって大変なはず。
チャック付きの内ポケットに忍ばせている手渡された鍵にそっと触れて、
どう返信すべきか悩んでいるところに通知音が鳴った。
『おいで。』
『いつまでも聞いてもいいから。だからおいで。』
そっと髪を撫でるようなメッセージに熱くなる胸と頬に、
春の夜の風は優しい。
『ありがとう』
『日付変わりそうだから。先寝てて』
『うん』
『でも帰ったら起こすよ?』
『うん、わかった』
『いいの?』
『うん、いいよ(笑)』
『よっしゃ。あと少し頑張れるよ』
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