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深夜1時を過ぎて帰ってきた彼。
頭では起きなきゃと思うのに、疲れのせいか体が言うことを聞かない。
そんな私を彼は起こさないように静かに隣に潜り込んで抱き枕みたいに抱え、彼の浴室のシャンプーの香りを身にまとった私のニオイを大きく吸って吐いた。
「起きろよバーカ」
項の辺りでこもらせた声は甘ったるい。
「来てくれてありがと」
そして、掠れた声で呟いた。
半分起きていることに気づいているのかわからないけど、
「おやすみ」
愛の言葉みたいにそう言って、彼も私の体温と混ざって夢に落ちていく。
入り込むんじゃなくて、占領するんでもなくて、寄り添ってくっついちゃえばいいんじゃない?
まるでそう伝えるかのように。
春の夜に浮ぶ半分を、
あなたが埋めてくれて、
私はそれだけで満ちる。
*完*
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