7人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
2日目の朝。
前日の事があったから、母親は兄を気遣うように声をかけた。
「おはよう。今日は変な夢見ないで眠れた?」
母親の掛け声に、兄は答えずに質問した。
「……昨日、俺が寝てる時、覗いた?」
「え? 誰も覗いてないと思うけど……?」
「……雨、降ってたよね?」
「昨日は、降らなかったよね?」
母親は私達を見て言って、私も姉もそれに同意した。
それを聞いて、兄は深いため息を吐いた。
「……じゃあ、また夢か……。
……寝ててさ。廊下から光が入ったのが分かったんだよ。目を開けたら、襖が少し開いてて、そこから廊下の電気の光が入ってたんだ。
閉め忘れたかな? と思ったけど、誰かが覗いてた。
外で雨が降り出した音が聞こえて、父さんか母さんが窓が開いてないか見に来たと思ってた。
でも
覗いてるその目が……赤いんだ。
だんだんその赤い目が光って、流石にこれはやばい、って思った。
気付けばまた金縛りになってて、部屋は前の日みたいにたくさんの文字の紙が貼られてた。
雨の音に、だんだん人の声が混じり始めて、その声がたくさんの人間の読経に変わって、部屋中その怒鳴り声みたいな読経が響いたんだ。
赤い目のやつを見ると、もう居なくなってた。でも、気付いたら自分はたくさんのお坊さんに囲まれてて、全員俺を見ながら怒鳴るようにお経を唱えるんだ」
兄の静かな口調は、逆にその時の不気味さを増長した。
「動かない体を無理にでも動かそうとしながら、『止めてくれ、止めてくれ!』……って目をつぶって必死に願ったんだけど、どんどん読経は大きくなるんだ。
……で、頭が割れるんじゃないかってぐらいに大音量になったと思ったら……ピタッ……って止まった」
鬼気迫る話し方にどんどん引き込まれて、兄が言葉を途絶えたら、周りの音もピタッと止んだように感じた。
最初のコメントを投稿しよう!