兄の帰省

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「……それで静かになったから、おそるおそる目を開けたんだよね。 体も動くようになってた。 そしたら部屋は元に戻ってて、襖も開いてなんかいなかった。 真夜中なのに、電気もつけてない部屋の中がうっすら見えて、それで気付いたけど………雨なんて降ってなかったんだ」    兄の話が終わり、朝の清々しい空気の中、場違いに食卓は静まりかえった。 「……もうご飯たべよ!お兄ちゃん、嫌な夢だね!」  明るく言おうとする母親の声は、こわばっていた。  兄の話が強烈すぎて、この日の朝食は何も記憶に残らなかった。  寝不足の兄は朝食を終えると、居間のソファで崩れるように眠りに落ちた。
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