兄の帰省

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 3日目の、朝。  母親は、「おはよう」と言うだけで昨日も一昨日も聞いていた「よく眠れた?」という言葉は言わなくなった。  兄はその日も疲れたような顔をして食卓へ着いた。  自分と同じく、怖い話が好きな姉が思い切って兄に聞いた。 「お兄ちゃん!……昨日は、よく眠れた?」  姉の言葉に、母親は「くだらない事聞いてないで、ご飯の準備手伝って!」と怒ったように言った。  昨日までは母親も普通に兄に掛けていた言葉なのに、前日の2日間の内でまるでその言葉が我が家では禁句のような扱いに変わっていた。  母親は兄を見ず味噌汁をよそった。 私達兄弟は、兄の顔を見つめた。  ピリッとした空気の中、兄は疲れ果てた、というように深く息を吐いた。 「もう、昨日の事は話したくない」  そう言われても食い下がろうとする姉を、母親は叱った。  兄は予定より早めに東京へ戻る、と母親に告げた。  いつもはそんなことを言えば怒る母親が、すんなりと承諾した。  「夢は見なかった」と言ってくれれば良かったのに、話したくない、といった事で姉と私になんとも言えない未練を残した。  兄が過ごした3日間の夜の出来事。  はたしてそれは  夢か、現か。
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