とあるはるのひ

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しあわせを感じるときって、どんなときだろう。 昨晩誰かが、そう溢した。 その誰かが誰かは、発言した本人も含めて、恐らく誰も覚えていない。 何故なら、そう溢した誰かはそのあとに「こうして酒を飲んでいるときかな」と続け、それを聞いた誰かも頷きながら手元のものに口をつけていたからだ。 そんな、大層なことを言っておきながら、誰かたちは鳥が水を飲むようにちまちまと、複数人で長い時間をかけて一本を消化するくらいには酒に対して免疫がなく。 じゃあどこがしあわせなんだ?と聞かれたら。 大好きなチノメアで、大好きな誰かたちとお酒を飲めるようになったこと、なのかもしれない。 (うん。) 心の中でそんなことを思いながら、春は赤ジャージを着た少年を抱え上げる。 少年の赤ジャージは、かつて「テディベア春」が着ていたものだ。 テディベア春を見付けた少年が着たいとごねたものだから、仕方なく着せてあげたのだけれど、数年ぶりに生まれたままの姿になったテディベア春を見た社長が「全裸」と笑ったので、なんだか微妙な心境だ。 そんな全裸テディベア春を抱えながらすやすや眠る少女を、優しく揺らしながらあやす後ろ姿に、春は数秒ほど唇を噛みしめたあと、声をかけた。 「小春様、ビビは眠ってしまいましたか?」 その声に気付いた小春は、ゆっくり振り返って、そっと頷いた。 全裸テディベア春を抱えて眠る少女、ビビは、小春のだっこじゃないと眠らないのだ。 「ありがとうございます。私がビビをベッドに運びますので、小春様は少し休んでいてください。」 「むぅ。」 春が眠るビビをそっと受け取ると、何故か小春は頬を膨らませて春を見上げた。脳内で、それはそれは分厚い「小春様取扱説明書」を高速で捲るけれど、脳内春はページを探し当てられずに白旗を振っている。
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