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「お腹が空きましたか?」
とりあえず、「これさえ言っておけば正解では無くても不正解でも無い魔法のワード」を出すけれど、小春の反応から察するに、それすら限りなく不正解に近い。
(魔法のワードが効かないときは…)
脳内春が「緊急事態」のページを熱心に読み解いていると、腕の中のビビが眉間に皺を寄せた。一度ぐずられると、また小春が長い時間をかけて寝かしつけないといけなくなるので、急いでベッドへと運ぶ。全裸テディベア春も忘れてはいけない。
「おれ、ビビにこもりうたうたう!」
「ニナイ、ビビはもう眠っているから、子守歌はいらないよ。」
「そうなの!?」
赤ジャージを着た少年、ニナイは、目をキラキラさせながらビビのベッドに張り付いた。
騒がしくて空気の読めない子だけれど、眠ったビビを起こしてはいけない、というのは、最近ようやく覚えることができた。ビビが泣くと、泣き止むまで誰も遊んでくれなくなるからつまらないのだ。
「あ、先ほど日和からチョコを預かりました。小春様にどうぞ、って。」
「春。」
相変わらずふくれっ面な小春の隣に腰を下ろすと、少し低い声色で春の名を呼んだ。脳内春、聴覚担当がヘッドホンに耳を傾けながら(本気で怒っているわけでは無いけど不満があるときの声色)と判別する。
「どうしましたか?」
「いつになったらその、小春様、って、やめてくれるの?」
「!」
いつまでも正解を導き出せない春に、痺れを切らした小春から正解が発表される。
脳内春は(以前も付箋挟んで赤マーカー引いたページだ…!)と自らの失態に頭を抱える。これはもう減給処分だ。
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