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「小春様は、小春様ですから。」
「嫌だ、って何回も言った。」
「こはるさまー!」
「ほら、ニナイも真似しちゃって。ニナイはなんでも春の真似したがるんだから。それにそのうち言葉覚えるようになったら、ビビまで私のこと小春様って呼ぶようになっちゃう。」
「幼子と言えど小春様に敬意を払えるのは素晴らしいことだと思います!」
「敬意とかいらないから!」
日和作のチョコを食べながら、小春の声がさっきよりも低くなる。聴覚担当は(日和のチョコが無かったら危なかったぜ)と額の汗を拭った。あとで日和にお礼をしなくては。
「私にとって小春様はなによりも大事な存在ですから、例え小春様が許しを下さっても敬意を払わないと落ち着かないのです。」
「私そんな偉大な人じゃないし、」
言葉のあとの、少し長めのため息。優秀な聴覚担当も、首を傾げる。
「小春様…?」
「…私のこと、好きじゃないのかな、って、…思、う。」
膝に埋められた赤い顔。
脳内会議室で休むことなく働く脳内春達が、一斉にその手を止めた。
「すっ…、」
「……。」
「好きに、決まってるじゃ、ないですか…!!」
あまりの衝撃で、「恐らく誰も覚えていない」と思っていた昨晩の記憶が、少しだけ戻る。
(しあわせを感じるときって、どんなときだろう。)
そう言った誰かも、酒を飲んだ誰かも、やっぱり思い出せないけれど。
そのときに思ったこと。
そのときに感じたこと。
大人になって、変わって得たことと。
もう、何年も前から、ずっとずっと変わらないこと。
「、……。」
「……。」
「……こは、る。」
自分のしあわせは、いつだってここにある。
「……はい。」
(真っ赤な顔で頷いた、君の笑顔。)
(童顔で有りながらも、すっかり幼さの抜けた、君の横顔。)
(チョコを美味しそうに食べる口。)
(子供を愛おしそうにあやす声。)
「好きじゃない、なんて、思ったことないですから。」
自分のしあわせを全部詰め込んだ。
そんな君が、今日も自分の隣にいる。
今日もしあわせは、ここにある。
……………………
子供は二人の子に見せかけたチノメアで預かってる子です←
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