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「職業柄、耳にした彼女に関する噂から残された記録に辿り着くことが出来た。まさか、彼女自身がまだ現存していたとは思わなかったけど。」
それが『アリス・プロジェクト』。
サイボーグ技術の開発と、その試作機である『AR-01アリス』を生み出す為のプロジェクト。
サイボーグ技術開発の為に同時並行で研究が行われた結果生み出されたのが人工臓器、人工皮膚、金属骨格、CNT(カーボン・ナノチューブ・ファイバー)製人工筋繊維、血中ナノマシンという技術。
これが医療に転用されていれば、当時不治の病で苦しんでいた人々の多くを救えただろうが、機密事項故に公開されることは無く、それは叶えられなかったが。
そうして最先端の、当時の現行技術から大きく逸脱した科学技術を惜しげも無く投入されて生み出されたのが彼女。
かつては彼女は長身と抜群のスタイルさえ除けば、ごく普通の女子高生だったらしい。優れた身体能力を持つが故に被検体にされ、その過去の記録の大半は抹消された。
その所業は悪魔と呼ぶに相応しく、ひょっとすると世界は崩壊する前からどこか壊れていたのかもしれない。
「僕は自分の戦いを終わらせ、眠りについたはずだった。僕自身はもう二度と目を覚ますつもりは無くて、あの装置があった施設と一緒に緩慢に朽ちてゆくつもりだったんだ。」
有栖は椅子の上で足を組みながら言う。
自分のことなのに、まるで他人事だ。
「さっき言ってたな。それはどういうことなんだ?」
それは、ふぁぶれが気になっていたことだ。
『戦いを終えて』と言うことは彼女は何らかの、それこそ生きる目的を終えたのだろうか。
「長い戦いだった。僕は全てのサイボーグ技術の元になった。だからこそ、僕のデータをもとに更に何体かのサイボーグが作られた。技術を試す試作機じゃなくて、目的に応じて先鋭化した機能をもつサイボーグだよ。」
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