0人が本棚に入れています
本棚に追加
こうして、有栖のかつての戦いが明かされた。
筆舌し難い程の、どうしようもない戦いが。
自分の正体を偶然知ってしまった少年を護る為に戦い、自分と同じ境遇の、自分の後に生み出されたサイボーグ達を救うべく戦い、自身の追ってと戦い、彼女は遂に崩壊前の世界の暗部組織と相対した。
サイボーグ技術を生み出した、根源そのもの。
遂にそれを滅ぼした有栖には、それでも平穏は訪れなかった。
組織が倒れたことで、大半のサイボーグ技術は失われたが、それでもサイボーグ技術を求める存在は多かった。
時の権力者、マフィア、果てにはいち国家までが有栖と彼女が救ったサイボーグ達を手に入れんと狙った。
戦いの中で有栖でさえ、全てを守りきれず、残された多くのサイボーグは身勝手な人間の手に堕ちるよりは自ら死を選び次々に自己破壊で命を落とした。
その戦いの中、有栖はかつて守ると決心した少年すらも巻き沿いを受けて失い、最後には3人のサイボーグしか残らなかったと言う。
皮肉にもほぼ最初期に製造された彼女らはここに至り、遂にまともに生きることを諦めた。
街から離れた郊外で意図的な大爆発を起こし、自身等の死を偽装、それぞれが別々の古びた施設を選び、そこで眠りにつくことにしたのだ。
いつの日か、自らの存在が受け入れられる日が来るまで。
しかし、2人とは違い、有栖はもう目覚める気は無かったと言う。
戦いの中で多くを失った彼女は、2人が眠りにつくことを決めた時点で既に戦う目的を失っていた。
守るべきものも無くなった彼女は戦いを終え、役目を終え、静かに緩慢に朽ちてゆくことを選んだ。
あえてそうしたのは、残された2人が自分を求めた時に、応じる為の猶予期間だったのだ。
こうして、有栖の戦いは多くの喪失の中で終わった。
最初のコメントを投稿しよう!