その眼に再び灯を

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「おい、悠々と。これって…」 「わざわざスキルじゃなくて直接足を運んだ甲斐があったっす。」 そこは古びてもうだいぶ前に放棄された研究所のような施設だった。 天上が少し崩落し、明かりが差し込むその部屋には二人の男性が居る。 一人は丸眼鏡にぼさぼさ頭の青年、もう一人は褐色肌に麦藁帽子の逞しい男性だった。 「正直、俺でもコメントのしようが無いっすよ。ああ、間違いなく人間じゃないっすよちょこさん。過去はともかく『今』は。」 「それは見ればわかる。」 悠々と、そう呼ばれた青年にちょこ、と呼ばれた男性が突っ込む。 息の合ったコンビだ。 そして、二人が見下ろしているのは一つの装置だった。 巨大な強化ガラスの筒と周囲に何らかの機材で構成されているそれは、放棄された施設のもののはずなのに、未だに稼働している。 そのガラスの筒の中で、一人の少女が寝ていた。 裸身の彼女の身体は均整がとれスタイルが良く、なおかつしなやかな筋肉のついた強靭さを感じさせるもので、その髪は長く濃蒼色だった。胸元と右肩には『01』という刻印が刻まれている。 そして、その左目の周りの皮膚は剥げ、金属光沢を放つ筋肉のようなものが見えている。 人間の姿をしながら人間では無いもの。 「世界崩壊前の、負の遺産ってやつか。」 「そんなところっすね。さて…」 言いながら悠々とは機械を調べ始める。 彼はメカニックだ、流石にこんなものを見れば興味も湧くだろう。
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