その眼に再び灯を

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ついつい、少しだけ不注意になるくらいには、調べたくなる。 「おい悠!」 「あっ…」 ほんの些細なことだった。かすっただけだった。 しかし確実に、彼の右肘はガラス筒の近くの機材のなんかのボタンを押してしまった。 否、押されるほどの勢いでは無かったが、もう古くなっていたそれは、その僅かな振動を認識してしまった。 何年、下手したら十数年ぶりにガラスの筒が開く。 そして、寝ていた彼女の目が開いた。 吸い込まれるように青いそれは『光』を放っていた。文字通り、ライトの如く青い光を放っていたのだ。 「『AR-01アリス』、不測の事態によりセーフモードで起動。システムチェック…23件のエラーを確認、現在の出力…38%。正常稼働に必要な出力に足らず、拡張機能を使用制限。」 少女は半身を起こしながら機械的な口調で言う。その度、眼の光がちらちらと点灯と消灯を繰り返している。 「身体に損傷あり、ナノマシンの稼働状況…35%。自動修復による完治は望めず。『AR-01アリス』は再起動します。」 そう言うと彼女の目の光が消えた。 「君たちが、僕を起動したのかい?」 ここで初めて、彼女が二人に話す。 『僕』という言葉づかい通りに、ボーイッシュな印象を与える。 「あ、ああ…正確には不注意でだが。」 「そう、内臓時計によると、僕が休眠状態になってから18年が経ったようだね。もう起動する事も無いと思ったけど。」 「所であんたは…」 「サイボーグ、じゃないっすか?」 悠々とがちょこ…ちょこ饅頭を遮り彼女に話しかける。最初の時点で予想出来ていたようだ。 「そうだよ…ああ、左目の傷、治ってかかったから分かったのか。」 少女はそれを肯定した。 彼女は人間ではない。 その身体の大半を人工物に置き換えた存在、サイボーグだ。
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