その眼に再び灯を

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今の、いや世界が崩壊する前ですら、まだ研究がスタートしたばかりの分野であるはずの。 しかし、彼女は既に完成している。それどころか最低でも18年は稼働している。 それが何を意味しているのか、想像はつくだろう。 「自己紹介がまだだったね。僕の名前は姫見沢 有栖。サイボーグとしてのコードネームが『アリス』。」 少し微笑みながら、彼女は自身の名を言った。 ―――――――――――――――― 「それで、リーダーがみんなを集めたんだ。」 壁に背中を預けながら言うのは長い金髪を1つに結び、膝丈の黒い着物に身を包む赤い瞳の少女のような見た目の少年だ。 「そう言うことだ、エネ。流石に二人でどうこう出来る案件じゃないしな。」 肩をすくめながらちょこ饅頭が言う。 そこは酒場だった場所の跡地で、他にも何人かの人間が居る。 「と言ってもね、どうするのさ?僕なんて全く理解出来ないよ。ずっと籠の鳥だった身としては。彼女みたいなのが存在するなんてのが信じられない。しかも拾ってきちゃう何て。」 「エネよう、それじゃ捨て猫拾ったみたいだぜよ。」 エネと呼ばれた少年の頭の上に居た餅のような生物が言う。 彼の名は千堂シナノ。れっきとした人間だが、理由有って餅のような姿になっている。 理由有って、でこんな超現象が済まされるのが今の世界だ。 「僕から見たら君の頭の上の彼の方が信じられないかな?データベースを当たっても、彼のような生命体の記録は無いし、どんな病気にも合致しない。」 有栖は借り物のシャツとズボンを着ている。ちなみに180cmを超える彼女の身長、そして豊満なバストでは女性陣の服ではサイズが合わなかったので男物(それでもかなり大きめの)だ。 左目は白い眼帯を巻いて隠している。 流石に街中であの傷を見せると問題がある。 超能力を知っていても、皆サイボーグは知らないのだから。 「いやーそんなことより、アリっちは美人さんだねぇ。」 キャンパスを片手にそんな横槍を入れたのはふわふわのポニーテールにタレ目の少女だ。 彼女の名は飽人。 悠々と、ちょこ饅頭、エネ、シナノの『旅団』のメンバーである。 この世界で有名なの旅団『平和主義同盟』の、だ。 自由と不服従を掲げる、小規模ながら一騎当千の猛者が揃うチーム。
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