その眼に再び灯を

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「お前は話の流れをぶった切るな…まぁ、こんな事情ならリーダーが招集をかけるのも無理は無いか。」 呆れたように飽人に突っ込むのは一人の青年だ。 彼の名は『ふぁぶれ』。飽人とはパートナー的な存在でもある。 そんな有栖を見る彼の目から滲むのは、嫌悪感か。 それはおそらく彼女にではなく、彼女が『生み出された経緯』に対するもの、か。 苛烈とも言える程強い彼の正義感から来るものだろう。 警察官の息子であった彼、皆はそんな彼を『行き過ぎた正義』だとか『必殺仕事人』だと言っているが。 「おいこら、お客さんにまでガン飛ばすな!」 「…ちげぇよクリボー。」 「オイラをクリボー呼ばわりするな!」 エネの頭から跳び、ふぁぶれに躍り掛かるシナノ。 数度の組み合いの後、ふぁぶれは壁にべちっ、と音を立てて広がった。 「機嫌悪いね。余程君のカンに触るんだ…あの人の経緯がさ。何か出来る訳でも無いのに。」 「うるせぇ。」 壁にへばりついたシナノを剥がして胸に抱きかかえながら、やや意地悪な微笑みとジト目で見るエネにそれだけ言った。 相変わらず性格が悪い、その言葉は飲み込んだ。 エネは基本的にパートナーである『橙空』と言う女性以外には毒のある物言いをする、やや斜めに構えた態度なのだ。 それでもシナノをフォローしているように、根は悪くはないのだが。 そのパートナーの『橙空』は今は居ない。ショッピングに行っているのだ。
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