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それでも有栖の言ったことが、ふぁぶれは引っかかっていた。
有栖の言った「戦いを終えて、眠りについた」という言葉。
どうやら(左目の損傷を見ればわかることだが)身体にもダメージが残っており、それを解消せずに休眠状態になったのだから、もしかすると彼女はもう目覚める気が無かったのかもしれない。
「でも女の子の顔に傷はいただけないなぁ~」
「…おい。」
だが、パートナーの飽人(シナノはパートナーと言うよりペットないしマスコットだ)はふぁぶれの心に渦巻く感情には無頓着だった。
こんな気の無い会話をしている
いつもの事だか、こんな超科学的存在相手でも態度が変わらないのは、ある意味らしいと言えばらしい。
「ナノマシンが正常稼働していればこれくらいなら自動修復出来るのだけどね。今は出力自体が正常値には程遠いし、修復は望めない。人工皮膚の技術なんて、もう残ってないだろうし。」
そんな他愛の無いことにもきっちり受け答えしている辺り、有栖は真面目なのだろう。
「う~ん、わたしのスキルでどうにかならないかなぁ?」
「やめとけ。構造も何にもわかりゃしないんだ。悪党を縛り上げるのとは訳が違う。」
「ぶーそんなこといってぇ~」
ぶー垂れても仕方ないだろう、とふぁぶれは飽人をあしらう。
と言っても、機械工学やら人体学の専門家でもないと理解すら出来ない代物だ。下手に手を出さない方が良いだろう。
ふぁぶれも含めて旅団のメンバーは何かしらの超能力を持つ。
飽人のそれは描いたもの具現化する『画霊転生(ピクチャー・ペイント)』と言う汎用性に優れたものだが、有栖の左目の傷の修復は無理だろう。
物は物でも『人工皮膚』なんて聞いたことの無いもので出来ているのだから。
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