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私と彼もそうして始まった付き合いとはいえ、成人した今でも恋人という名の関係を維持している。
高校卒業後、私は地元の専門学校へ、彼は大学進学のため上京して遠距離恋愛となった。
電話やメールで毎日やり取りをし、長期休暇には帰省してくれて外泊、旅行なんかもしたりして周りにはいつまでも仲良しカップルと冷やかしを受ける程の恋人ぶり。
私が上京する事もあったりして、彼の部屋で過ごすのは彼に包まれているようで幸せだと感じる一時だった。
【離れていても私たちの心は繋がっている】
彼もそう思っていてくれていると会えば信じられる時間が確かにあった。
そう……【あった】の。
彼との時間は今年で7年目。
23歳となった私たちはきっとたぶんこれからもこのまま続いて行くのだろうなどと、誰かが囃し立てる程に周りには順調な関係を見せていた。
本当は月日を数えるたびに電話もメールもおざなりで、年に数回の逢瀬もただ温もりを重ね会うだけでどこか冷めたもの。
『会いに行くわね』
の文字列に以前は返ってきた喜ぶ返事も『判った』の一言だけ。
───判ってるの。
彼が遠く離れた場所で辛く寂しく震えている時に触れてあげられなかった私だから。
でも、判りたくないの……通じていると、私も同じだって口に出来ない事、知っててくれていると信じていたかったから。
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