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ゆっくりと彼の元へと近付く時間が欲しくて高速バスに乗る。
眠れぬまま虚ろになる目を、引いた布地の間から暗闇へと向け続けた。
明けた早朝の人も疎らな静けさ漂う街並みの中、降車した人の流れに倣って白光りする四角いゲートの中へと進んでいく。
どこから集まってくるのか不思議に思うほどの人の群れの中を頭上の案内板を頼りに、彼の住む街への乗り馴れない地下鉄に乗る。
圧縮された熱を持つ空気圧に耐え、隙間を探して出来るだけ外を眺められる場所に立ち、四角い箱の中で足を踏ん張る。
真っ黒な外壁が開けて濁った曇り空が視界に入ってくると、私の鼓動が少しずつ逸り始める。
息を吐き、目的の駅で降りると人並みに押されながら一歩、また一歩と清掃されたタイルの段数を数えて外気のあたる場所に辿り着いた。
清々しい空気なんてここには無いのだろうか。
それとも私の気持ちに応えてくれているのだろうか。
薄暗く重い曇天を見上げて呼吸を整え、彼の待つ部屋へと歩く。
来る事は判っていたはずだ。
今日、私は会いに行くと告げていたのだから、知っていたはずだ。
なのに、出迎えた彼の部屋の中には先客が居座っていた。
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