プレミアムflyday

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今日は特別な日になるはずだった。それこそ私にとってはプレミアムな日だ。誕生日なのだから。しかし、今日は風邪で欠員が出た上に、依頼人の急なレイアウトの変更で多忙を極めた。予定通りに進まなかった。家族には申し訳ないことをした。私を祝うために色々と準備をすると張り切っていた。もう一度時刻を確認する。日付は変わっていた。家族には遅くなると連絡してあるので心配してないが、妻と娘の残念そうな顔が思い浮ぶ度に、諦め切れないもどかしさを感じる。なんで寄りにもよって今日なのだろうか。目を閉じて冷静に考えた。もう誕生日は終わった。後は地下鉄に乗って自宅に帰るだけだ。 発車からしばらくすると、電車が急に止まった。体が進行方向に倒れる。私は手足を使って、なんとか踏ん張った。他の乗客の中には座席から転げ落ちるものもいて、予期しない停車であるとすぐにわかった。事故でも起こったのだろうか。確認しようにも外は暗かった。ぼんやりとした小さな明かりが線路沿いに点々とあるだけで周囲の様子は見えない。車両も蛇行していて、先頭がどうなっているのか把握できなかった。車内アナウンスもない。時間が経つにつれて早く帰りたいという気持ちよりも、大丈夫なのだろうかという不安が強くなってくる。すると、その不安を一層深めることが起こった。車内の電気が突然消え、暗闇に包まれた。視界が遮られ、心臓が大きく跳ねる。静まり返った車内からは空調の音だけが聞こえた。こんな状況になっても、他の乗客から悲鳴や叫び声は上がらなかった。なぜそんなに冷静でいられるのだうか。私は思いっきり叫びたかった。     
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