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一体お前のどこに電車を止める権力があるんだ。全くもって理解できなかった。何か明かせない理由でもあるのだろうか、と私が考えていると、乗客たちの後ろの方から恰幅のいい丸顔の車掌が現れた。帽子を取って申し訳なさそうに言った。
「すいません。そろそろ時間です。明日のために、車内の点検と清掃を始めないといけないので、降りてもらえますか?」
どうやらこの夢のような時間は終わりのようだった。しかし、未だに電車は駅には着いていない。私は眉をしかめるが、妻は納得したように頷いた。
「そうね。長居するのも迷惑だものね」
その言葉に続いて裕子たちはいつの間にか開いたドアに向かっていく。私はみんなを止めようとするが、妻が私の手を取り、ドアの前まで連れていかれる。そのまま声を出すこともできず、妻たちの手で、車両の外に強引に放り出された。薄暗いトンネル内の地に倒れる瞬間、私は目を閉じた。
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