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ジョンに続き、一行は沼の上に渡された橋をゆっくりと渡り始めた。
一直線に延びた橋の先には、小さな塔のようなものが見える。
沼の真ん中にぽつんと建つそれは、まるで沼から生えているようだ。
アイリーンは不意に足を止めると橋から顔を出してみたが、近くから見る水は思ったよりも白くは見えなかった。
どちらかと言えば、ほとんど透明で水底に揺れる水草の白色まで、よく見える。
この沼を泳ぐ魚もやっぱり白いのかな、とアイリーンは目を凝らしてみたが、魚どころか虫の姿さえ見つけることは出来なかった。
近づくにつれ、塔はますます高さを増すようだった。
やっと塔の下までたどり着いたところで見上げてみると、壁は想像していたよりも随分高い。
冷たい石壁に見下ろされているような威圧感のある眺めに、アイリーンは思わず首をすくめた。
「その女っていうのは……何者なんだ」
ロビンが小声で訊ねた。
しかしジョンの答えは頼りない。
「さあ……」
「でも知り合いなんでしょう?」
アイリーンが言うと、
「まあね」
とは言ったものの、
「知り合いっていうほど、知り合ってはいないけど」
と、ジョンは乾いた笑い声をたててから、ぼそりと呟いた。
「知り合いになんて、なるべきじゃなかったんだ」
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