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夕日が沈み、赤に染まっていた海が青さを取り戻し始めると、急に風が冷たくなった。
アイリーン・べネットは自室の窓枠に手をかけて、どこまでも広がる海を眺めていた。
時折強く吹く風が、綺麗に結い上げられた彼女の金色の髪を、乱しながら通りすぎていく。
それに気がついたメイドのエルシー・ニコルは
「冷えてきましたね」
と独り言のように言って窓を閉めると、化粧台の前に座るアイリーンの髪を整え直してから、満足そうにひとつ頷いた。
それから、わきに置いてあった箱を開いた。
宝石の煌めく豪華な首飾りを取り上げると、アイリーンの首につける。
アイリーンは鏡にうつるそれを見て、思わず目を見開いた。
エルシーが、申し訳なさそうに目をそらしたのが分かったが、口を開かずにはいられなかった。
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