旅立ちの時

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「どういうこと?」 アイリーンは、鏡越しにエルシーを見た。 「私は、これを送り返して頂戴と言ったはずよね」 「申し訳ございません」 そう何度も繰り返すばかりで、他の言葉を口にしようとしない彼女に、苛立ちを抑えて唇を噛み締める。 裏切られたという気持ちが、腹の底から、ふつふつと沸き上がってくる。 「婚約者からの贈り物を返すなんて、いくら私の言いつけでも出来なかったの?」 怒りを隠そうと、薄く笑いながら言ってみる。 が、それは自分でも分かるほど嫌な言い方になってしまっただけだった。 「まさか、そんなこと! ただ……」 今にも泣き出しそうな顔を見て、アイリーンは、ふっと我に返った。 もう、すっかり怒りは吹き飛んで、静かにため息をついた。 すぐに気がつかなかった自分が嫌になる。 「お母様ね」
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