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エルシーは何も言わずに、肩をすくめただけだった。
「お母様が、首飾りは返さないで、隠しておけって言ったんでしょ」
断定的に言ったが、これにもエルシーは何も言わずに目をそらすばかり。
アイリーンは諦めたように首を振ったが、やがて、どうして今日、その首飾りをエルシーが持ってきたのかに気がついて、はっと顔を上げた。
「これを今日つけるように言ったのも、お母様なのね」
エルシーは、恐る恐る首を縦に振り、アイリーンの耳元で囁いた。
「今日、ダグラス・コリンズ様が夕食にいらっしゃるそうです」
アイリーンは目をぐるりと回して、首飾りをつまみ上げた。
「これをわざわざつけさせるってことは、ただ来るだけじゃ、済まないわね」
「なにしろ、アイリーン様の婚約者ですから」
顔を歪めるアイリーンに、エルシーは小さく笑って言った。
「プロポーズされるかもしれないっていう時に、そんな顔をするのは、世界中でお嬢様だけですよ、きっと。
誰もが羨むお相手ですのに」
「だったら、私以外の誰とでも結婚すればいいのよ。
その方がお互いに幸せになれる」
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