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そっと一つを覗き込むと、中身はイチゴのジャムにしか見えない、ねっとりとした赤い液体。
しかし、そこに混ぜられているものが何かの骨だと気が付くと、アイリーンは伸ばしかけた手を慌てて引っ込めた。
そんなことをしている間にも、ジョンとダグラスはビンには目もくれずに、どんどん階段をあがっている。
しかし道草を食っていたのは、アイリーンばかりではなかった。
「なんだこれ。
なにも入ってないのかな」
と声がして振り向いてみると、ロビンも同じようにビンに興味を惹かれたようで、その中の一つを持ち上げたところだった。
彼の言う通り、手にしているビンは何も入っていないらしい。
少なくともアイリーンには、確かにそう見えた。
どのビンにも得体の知れない物が詰まっている中で、それは珍しいもののようにさえ思える。
「ラベルは貼ってあるけど、何て書いてあるんだろう」
ロビンが言いながら、中身を試すように振ってみた、その時。
彼の手の中で、まるで抵抗するかのように、ビンが大きく震えた。
「うわっ」
狭い螺旋階段にロビンの声が響き、続いてジョンのため息が漏れる。
その次の瞬間
「いじめないであげて」
と聞きなれない声が頭上から降ってきたものだから、アイリーンは驚いて顔を上げた。
先頭を行くジョンよりも、数段高い位置に立ち、こちらを見下ろしていたのは、美しい女だった。
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