取引

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通されたのは、小さな円形の部屋だった。 見上げると、剥き出しの梁の向こうに窓が一つあるのが見える。 窓はそれだけだった。 周りを囲む壁は一面が棚になっていて、本やら瓶やらが詰め込まれている。 たくさんの引き出しに埋められているところもあった。 その不思議な空間に圧倒されていると、アナベルはゆったりと腰を下ろして、口を開いた。 「ジョン以外の方々は、初めまして、ね?」 ロビンに、ダグラス、そしてアイリーンへと流れてきた視線が、ふと止まった。 じっと視線を注がれているのを意識していると、みるみる居心地が悪くなっていく。 アナベルの容姿が美しいのは確かなのに、どうしてか感じるのは恐ろしさばかり。 アイリーンはチラチラと見返すのが精いっぱいだったのだが、アナベルはそれを面白がってでもいるように、じっと目を離さない。 そして低い声で囁くように言った。 「なんて美しい瞳をしているのかしら。 まるで海の底のような青」 「あなたの瞳も、とても綺麗です」 アイリーンがおずおずと言うと、アナベルの漆黒の瞳が、すっと細くなった。 「どうもありがとう。私のお気に入りなのよ、これ。 この前、手に入れたばかりなの」 「手に入れた……?」 その言葉の意味を理解することはできなかったが、アナベルの妖艶な笑みを見ているだけで背筋がゾクリとした。 それ以上は何も訊ねてはいけないと、自分の中の何者かが警告しているような気がしていた。 アナベルならなんでも質問に答えてくれそうにも思えたのだが、その答えを聞く勇気はなくて、アイリーンは居心地悪そうに座り直した。
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