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「懐かしいわね。
あなたが前回ここに来たのは、何年前だったかしら」
アナベルは遠い目をして言った。
視線を感じたかのように、棚に押し込まれた瓶の一つがカタカタと音を立て始める。
それが止むのを待って、彼女は続けた。
「あなたがここへきたとき、こう言ったわね。
『魔法が使えるようになる方法を教えてくれ』って 」
ジョンは聞いているのかいないのか、ぼんやりと天井を見上げているだけだった。
それでも、皆の視線が自分に集中していることに気が付くと、観念したように口を開いた。
「そして、あんたはこう言った。
『人魚と交渉すれば、彼女達の持つ力を手に入れることができるかもしれない』とな」
いかにも気が乗らない、というふうにジョンはのろのろと手を上げた。
そして指を鳴らすと、指の間から一瞬、炎が上がった。
アナベルがニヤリと笑った。
「念願叶ったっていうわけね。
良かったじゃない」
ところがジョンは笑顔になるどころか、アナベルを睨みつけたのである。
「なにが良いものか。
確かに、こうして俺は魔法が使えるようになった。
だけどな、人魚はただで力を与えてくれたわけじゃなかったんだ。
代わりに……」
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