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「アイリーンを救うことの方が大切なのは当然だろう。
お前か自らの意思で契約してるというのだったら、自業自得だ」
「そりゃ、そうだけど。
そこまで、はっきり言わなくたっていいじゃないか」
ジョンが悲しそうに眉を下げると、ダグラスが長いため息をついて口を閉じる。
するとロビンが頭をかきながら言った。
「それで?そんな契約をするくらいだ。
期限がきたらどうするか、考えてたんだろ?」
ロビンが言うとジョンは目をぱちぱちっとしてから、
「人魚がいくら怖い存在だっていっても、陸の上までは追って来れないだろ。
だから、どうにか海にさえ近づかなければ、逃げ切れるんじゃないかなと思って……。
でも、そうもいかなくなってきちゃったな」
乾いた笑い声が静かな室内に響いて、すぐに消えた。
ロビンが深く息を吐き出す横で、ダグラスの眉がみるみるつり上がっていく。
とうとう堪えかねたとみえて、怒声が響いた。
「お前がそんな軽い考えで無責任な契約をするから、アイリーンにまで迷惑がかかってるんだ。
分かってるのか!
こうなったら、もうお前ひとりで人魚の元へ行ってこい。
それですべてが丸く収まる!」
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