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すぐさまジョンの泣きそうな目が自分に向けられた時、アイリーンはどんな顔をしたら良いのか分からなかった。
確かにジョンは自業自得だ。
それは分かりきっている。
けれども、ここまで一緒にきたのに、まさかジョンだけを見捨てるわけにはいかないではないか。
それに……。
アイリーンの頭にあったのは、やはり人魚の鏡のことだった。
ダグラスの言うままに、ジョンを人魚に引き渡せば、自分の命は助かる。
それは確かに大事なことだったが、それでは元々の目的を果たすことは、永遠にできなくなる。
そのことはジョンにも分かっていたに違いない。
彼は素早くアイリーンの脇に立つと、早口で言った。
「アイリーン、きみは何の為に俺の所へ来たのか忘れたのか?
君たちだけで人魚から鏡を手に入れるのは無理だ」
それから、ぐいと肩を引き寄せると、耳に触れんばかりに唇を寄せて囁いた。
「でも今なら俺がいる。
かろうじて残っている俺の力を使えば、鏡を手に入れることができる」
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