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あまりに熱っぽく囁かれて、アイリーンは顔が赤くなるのが自分でも分かった。
ダグラスが音を立てて立ち上がると、二人の方へと足を踏み出してくる。
それを見たジョンは肩をつかむ手に力を込めると、悲しげに言った。
「見捨てないでくれ」
その力無い声を聞いて、アイリーンの心は決まった。
素早く右手を上げると、二人の間に割って入ろうとしていたダグラスが不意を食らったような顔をして、足を止めた。
「アイリーン、ダメだ。
聞いただろう?
俺たちは、そいつに騙されていたんだぞ」
ダグラスの声は、いつになく感情が溢れているようだった。
確かに、ダグラスまでも厄介事に巻き込んでしまったのは申し訳ないと思う。
彼の言うとおりにするのが、正しいのかもしれない。
それでも、アイリーンは揺らがなかった。
ここまで来て、ジョンを犠牲に逃げ帰るわけにはいかない。
「一緒に帰ろう。
お母上も、待っている」
そっと差し出されたダグラスの手を見つめながらも、アイリーンはきっぱりと言った。
「私は、ジョンと一緒に行きます」
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