取引

21/43
前へ
/264ページ
次へ
「私たちっていうのは、もちろん俺とアイリーンのことだろ?」 ジョンが嬉しそうに言うと 「当然、俺も入ってる!」 とロビンも手を上げる。 「どうもありがとう」 アイリーンは、にっこりと微笑んだ。 ジョンはアイリーンに身をもたれかかるようにして、ダグラスに得意気な視線を送っていた。 そんな様子をニヤニヤ笑いを浮かべながら見ていたアナベルが、ぼそりと言った。 「あら、仲間外れにされちゃったわね」 明らかに挑発するかのような目つきで、ダグラスを見つめているアナベルは、この厄介ごとを楽しんでいるようだった。 しかし、いつも何を考えているのか分からないほど無表情のダグラスが、そんな挑発にのるはずがない。 当たり前のようにそう考えていたものだから、ダグラスが眉を吊り上げてアイリーンの方へと手を伸ばしてきたのを見て、思わず小さな悲鳴を上げてしまった。 勢いよく強く腕を引かれたせいで、転びそうになりながら、よろよろとダグラスの背後へと回る。 ダグラスがジョンを睨む目は、当然アイリーンからは見えなかったが、余程恐ろしいものだったのだろう。 視線を受けていないロビンの方が首を縮めているのを見れば、簡単に想像がついた。
/264ページ

最初のコメントを投稿しよう!

90人が本棚に入れています
本棚に追加