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深い霧が見渡す限り、広がっている。
まだ日が沈んで間もないはずなのに、霧のせいで辺りの様子はほとんど見ることができない。
それでも、数人の男たちが浜辺に横たわっているのは、どうにか確認することができた。
傷ついた体が弱々しく膨らんでは、しぼんでいるところを見れば、どうにか生きているのが分かる。
しかし男たち自身も、もう何時間もしないうちに、そのかすかな動きでさえも永遠に失われてしまうのだと分かっていた。
穏やかに砂の上を行ったり来たりしていた波が、にわかにスピードを速めると、男たちの足もとまでのびてくる。
が、その冷たさに身を震わせて、思わず足を引っ込める元気のある者はなかった。
ただみんな、その事実をぼんやりと理解するばかりで、動くこともできなかったのである。
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