プロローグ

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「そこまで言うのなら……もう少しだけ、生かしておいてあげましょうか」 男は瞬きひとつせずに女を見つめた。 「そんなことが出来るのか」 女は無表情のまま、眉を少し上げる。 男はしばらく、その目を覗き込んでみたが、なんの感情も読み取ることは出来なかった。 男は恐る恐る呟く。 「でも、ただってわけじゃ……ないよな」 「もちろん」 女が続ける言葉を、男は眉間にシワを寄せて聞いていた。 それから、考え込むように目を強く閉じ、ぶつぶつと何事か呟いていたが、やがて了承を示して頷いた。 「契約成立ね」 女が男の頬に触れる。 男は思わず身を引いたが、女は 「大丈夫、言ったことは守るわ」 と囁くと、ゆっくりと顔を寄せていった。
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