599人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし彼は怯む事なく、真っ直ぐにあやめを見て続けた。
「こんなふうにする為に、あなたを目覚めさせたのではありません。あなたをみすみす弱らせるような真似が、私に出来るとお思いですか?」
あやめが怪訝そうに眉を寄せる。
「叶えて差し上げる、と申し上げているのです。あなたがそれを望むのであれば、いかに難しい事であっても」
その言葉にも、眼差しにも、少しの疑いの余地もなかった。
それが心からの言葉であると分かりながら、いや、分かるからこそ、あやめは不思議に思っていた。
何故だろう、と。
何故、彼はこんなにも自分に良くしてくれるのだろう。
それはこの半年間、問う事も出来ないまま、ずっと疑問に感じていた事だ。
最初のコメントを投稿しよう!