邂逅の柩

53/68
前へ
/334ページ
次へ
生きた人間のように、はっきりとしてはいないし、影もない。 空気に透けるような肌。 肩より少し長い、ゆるくウェーブのかかった髪。 身につけているのは、この学校の制服のようだった。 『お姉さん…、ありがとう』 刀祢を見つめ、高い声で少女は言った。 『なんだか少し、楽になった気がする……久しぶりにこうして元の姿にもなれたし』 その言葉で、やはり先程のドロドロが彼女だったのだと分かった。 『あなたは、ここの生徒だったの?』 『……うん、そう。もう6年くらい前の話だけど』 ---自殺か、事故か、病気か。 理由は分からないが、ここに当時のままこうして残っているという事は、彼女の命が6年前に絶たれたという事だ。 『…何か、やり残した事があるのね』 刀祢の言葉に、少女の姿をした霊はコクリと頷いてみせた。
/334ページ

最初のコメントを投稿しよう!

599人が本棚に入れています
本棚に追加