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『私に出来るのは、この笛を吹く事だけ。それ以外の何も、あなたの役に立つような事は出来ないわ。…でも、この笛の音色にあなたの魂が安らぎを覚えるのなら、いつかあなたを縛る鎖が解ける日が来るかもしれない』
『協力して……くれるの?』
恐る恐る問い掛ける少女に、刀祢は優しく頷いて見せた。
『ここで出会ったのも、きっと何かの縁でしょう。都合の良い事に、私には膨大な時間があるの。あなたの望みが叶う日まで、付き合いましょう』
その日から毎夜、この学校の音楽室を訪れ、笛を吹く事が刀祢の日課となったのである。
月の輝く晩も、底冷えする雨の降る晩も、飽きる事なく足を運び、刀祢は少女の為に笛を吹き続けた。
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