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(あれは…呪符!?)
少女がニコリと邪気なく微笑む。
「これが何なのか知っているようね。なら話は早いわ。…あまり手荒な真似はしたくないの。だから、大人しく言う事を聞いて?」
「脅しておいて、手荒な真似をしたくないなどと…ふざけた事を」
刀祢はギリリと唇の端を噛む。
おそらく彼女は呪術師なのだ。
そして後ろの少年も。
一人ならば、逃げられない事もない。
隙を見て、そこの窓から飛び降りれば良いだけの話だ。
いくら呪術を使えるとはいえ、彼らは所詮人間。
闇の深いこの時刻、有利なのは鬼であるこの身。
だが---
「あなたは逃げないでしょう?そこにいる霊たちを放っては逃げられない。妖のくせに、妙に優しい顔をしているもの」
見透かしたように少女が笑みを深める。
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