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残念だが、彼女の言う通りだった。
「何が望みなのです」
諦めてふぅと溜息をつく。
なるたけ穏便に事態を収束させるには、彼女の言葉に従う他はない。
もちろん内容にはよるが……。
少女がちらと振り返るように、少年と視線を合わせる。
「あなたの力が欲しい。…助けたい人がいるの。あなたのその笛の音、不思議な力があるのでしょう?」
「何故、その事を……?」
少女の視線が、刀祢の手元に注がれている。
「学校の七不思議…っていうか、単なる噂話かな。夜学校に来ると、綺麗な笛の音が聞こえてくるって。その笛の音を聞いてると、嫌な事全部忘れられるって。くだらないなって思いながらも、試しに来てみたの」
先程までの表情とは違い、少女は真剣な面持ちで語りかける。
彼女の願いというのは、どうやら切実なものらしかった。
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