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「御前…、外の世界へ通じる鍵は、あなたの中にあります。今我々がいるこの場所は、刀祢を閉じ込めた少女の、いわば精神世界とでもいうべき所。脱する為には、強い想いで、外にいる誰かを呼ばなければなりません」
「誰かを…呼ぶ?」
「ええ。あなたの呼びかけに、その者が応じる事で道は開かれるのです。…大丈夫、強き想いで呼べば、きっと外にも届きましょう」
「…うん」
そこまで告げると、安堵したように紫月は満足気な笑みを浮かべた。
「………刀祢のこと、宜しくお頼み申します」
消えていく紫の瞳を見つめ、あやめは力強く頷いてみせる。
「あなたの大切な人は、私にとっても大切な人だ。心配しないで」
…きっと、もう会う事はない。
そう思うと、悲しくて切なくて、やるせなかった。
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